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予約を取らない店 ・・・ 生き方を優先する

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ある飲食店から「自分の店を今後どうしたらいいのか悩んでいる」という、漠然とした相談を受けたことがあります。ある程度ぼかせばコラムに載せてもよいとのことでしたので、少し脚色しながらコラムにまとめます。


ご家族と数名の従業員で経営されているそのお店は結構な繁盛店で、経営自体は好調です。ただその多忙な一日が毎日繰り返され、週一日の休みも仕込みや準備などで潰れ、少々お疲れの様でした。そんな状態で「自分の店をどうしたらいいのだろう?」というご相談です。

お話をお伺いするとある一つの問題点が見えてきました。それはオーナーご夫妻が目指していた理想の姿とは別次元で、お店が勝手に回り始めていたのです。

オーナーご夫妻が「自分たちの好きな料理を好きなお客様に食べて頂きたい」という当初の理想とはかけ離れ、その理想以上に人気が出過ぎたため「ひっきりなしにご来店されるお客様をさばくしかない」状況になってしまっていたのですこの状況にオーナーご夫妻は疲弊されていました。うまくいっていない飲食店からみたら贅沢な悩みに見えるかもしれませんが、ご本人たちにとっては大問題です。

私たちが関わる経営改善は、赤字を黒字にするということだと思われがちですが、実はこのようなご相談も結構あります。私たちがよく提案する「ペルソナの設定」は、自分たちがおもてなししたいお客様はどんなお客様なのか、を改めて見直すことです。そのお客様に対して自分たちがどの様に接客していくのか、喜んでもらうのか、を考えていきます。


このオーナーご夫妻に提案したこと、それは「週休二日にすること」そして「ご予約をとらないこと」です。現在も想定以上の順調な売り上げがあり、またオーナーご夫妻にとって売り上げが最優先ではなかったので、週休二日にすることは特に問題はなくすんなりと受け入れられました。ただ「ご予約をとらないこと」には少々疑問をお持ちでした。せっかくお客様から「来たい!」とご予約を頂けるのに、それを断るのは悪い、というご感想です。

そのお気持ちはわかります。通常はそうでしょう。ただ、ここでこのオーナーご夫妻の生き方・働き方の理想を大前提としたとき、この予約をとるという行為がその理想を壊していました。ご予約を取る、ということはそのお客様のご予定に責任を持つことであり、オーナーご夫妻の状況に関係なくその日時はやってきます。自分たちが提供したい料理がその時に出せるかもわかりません。ここでオーナーご夫妻が理想とするスタイルが崩れる可能性があります。

この点を説明したところ、オーナーご夫妻はこれまでにもお客様のご予約に振り回されていたことに気づかれました。自分たちがやりたいこと(食べてほしい料理をお客様に提供する)ではなく、いつのまにか決まってしまったスケジュールにあわせて料理を考える、という逆の流れになっていたのです。それ以降、ご予約は基本的に受けず、本来自分たちがやりたかったことをやりたいようにする店へ原点回帰されました。


ある程度生活に余裕のあるオーナーご夫婦の例ですので、必死で売り上げを上げようとしている店舗には参考にはならないかもしれません。このお店の場合は「週休二日にする」「予約を取らない」ということで、本来自分たちがやりたかったことへまた戻ることができました。お店ごとに状況は異なりますので、このことが全てのお店への解ではありません。あくまで一例です。

このコラムで伝えたいこと、それはそれぞれのお店や企業にとって大切なことは、「自分が本当にやりたかったことはなにか」「なぜこの店を始めたのか」を常に忘れず、そこからずれ始めたらそれが「発展」や「成長」なのか、それとも「暴走」「予想外」なのかを見極めることです。

売り上げは大切です。ただ「改善」の対象はそこだけではありません。この一例を参考に、一度立ち止まってご自身の店や企業を見直してみませんか?




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