26.05.19
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完成前から“行ってみたい”ファンを作る 〜ツァイガルニク効果を使ったマーケティング〜
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宿泊施設のマーケティングというと、多くの人は完成した綺麗な写真を思い浮かべるかもしれません。もちろんそれも大切です。しかし最近は、「完成前」や「準備段階」をうまく発信している施設に、人が惹かれるケースが増えています。それは、「工事中のいま」しかできないマーケティングでもあります。
実はこれには、人間心理が大きく関係しています。その一つが、心理学でいう「ツァイガルニク効果」です。ツァイガルニク効果とは、「人は、完了したものより、未完了のものの方が気になる」という心理効果です。
例えば、
・ドラマの“続きが気になる”終わり方
・漫画の次巻予告
・YouTubeの「続きは後編で」
・工事中の新店舗
なども、この心理が働いています。実はこの考え方は、宿泊業とも非常に相性が良いです。
例えば最近は、
・改装中の様子
・新客室ができる過程
・サウナ制作中
・庭づくり
・料理開発風景
・スタッフ研修
・地域との取り組み
などをSNSで発信する施設も増えています。では、なぜ「工事中」を見せると惹かれるのか?本来、「工事中」や「準備中」は、昔の感覚では“見せないもの”でした。未完成は、弱みと考えられていたからです。しかし現在は逆に、
「どう完成していくのだろう?」
「完成したら行ってみたい」
「自分もその変化を見届けたい」
という感情が生まれます。つまり、“完成品を見る”から、“完成していく物語に参加する”へ、人の感覚が変わってきています。
■ 古民家再生系の宿
築100年の古民家を改装する様子を発信。
・梁が現れる
・土壁を塗る
・庭を整える
などの過程にファンが付き、「完成したら泊まりたい」という声が増える。個人で古民家再生/DIYをやっている方々の発信もよく見ます。
■ サウナ施設
サウナ好きの人たちは、完成後だけではなく、
・薪ストーブ搬入
・水風呂工事
・外気浴スペース制作
などの過程にも強い関心を持っています。
■ 地方リトリート施設
海・山・静けさ・自然などをテーマにした施設では、この場所がどう変わっていくのか?その世界観自体に共感が生まれやすい。
ただし注意点もあります。何でも見せれば良いわけではありません。高級宿ほど、「全部を見せすぎない」ことも重要です。例えば、
・完成イメージを少しだけ見せる
・全貌は公開しすぎない
・余白を残す
・想像させる
ことが、高級感や期待感に繋がる場合があります。
SNS時代は「過程」がブランド構築になります。昔は、完成したら広告を打っていました。しかし今は、完成までの過程そのものがコンテンツになります。そして、その過程に共感した人たちが、完成時には“ファン”になっている。これは、SNS時代の大きな特徴の一つです。
人は、完成された情報だけに惹かれるわけではありません。むしろ、「まだ完成していない」「これから変わっていく」という余白に、強く心を動かされることがあります。
宿泊業や飲食業でも、完成品を売るだけではなく、物語や変化の過程を共有するという視点が、今後さらに重要になっていくのかもしれません。
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