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責任を取って辞めます・・・それでなにか変わりますか?

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事業再生先でよく聞く言葉「責任を取って辞めます。」について、私たちの考えをコラムにまとめます。

それぞれのホテルや旅館、飲食店によって経営悪化に陥った原因は「売上が上がらない」「お客様が来ない」「評価が低い」・・・など、いくつかあります。それらを指摘したり理由を確認したりすると、その責任者は「私の力不足です。責任を取って辞めます。」と言われることがよくあります。確かに全く責任がなかったとは言えないかもしれません。それを信じて頑張ってきた部下に対しても、上司としての責任はあるでしょう。


ただ、「辞めること」が責任を取ることになるのでしょうか?これは、どう責任を取ったことになるのでしょうか?

私たちはこの様に発言した方々に「それはどういう責任の取り方で、それで現状の何が変わるのですか?」と必ず聞きます。誰からもまともな答えが返ってきたことはありません。言葉だけ聞くと「責任を取って辞める」ということは大変な決断ではありますが、現実は残された人たちがその人のミスをリカバーしなければならず、余計な仕事が増えるだけです。冷静に考えたら「失敗した人がその失敗から逃げる/放置して去る」「他の人が尻ぬぐいする」だけの行為でしかありません。

私たちはこのことを冷静に、そして具体的に相手に伝えます。その方が去った後に部下や周りの人たちがすること・やらざるをえないこと・リカバーすること・・・


過去にお一人、「納得感のある責任の取り方」をされた方がいらっしゃいました。


お土産物店の新規出店が上手くいかず、億単位の損失を出してしまったあるホテルの事業部長と責任についてお話をした時です。この時に私たちにサポートのご依頼がありました。その方は「全力でリカバーしたい。なので役職を外して一人のスタッフとして、半年でいいのでそのことに専念させてほしい。」と願い出られたのです。

社長と相談し私たちも協力するという条件で、事業部長(部下30人以上) →新設のRE部長(部下0 / リストラクチャリング部の意味) に変更、給料は役職無し同年代給与まで下げられました。肩書がついたのは「リカバーする時、周囲に対しては○○部長のままがやりやすいはず」という、社長のご厚意です。

この後の、この部長の働きはすさまじかった。本気になった男ってこんなにすごいのか、と感心するレベルの動きでした。早朝から出社して電話が鳴る前に自身の準備を済ませ、昼間は誰よりも電話を取りその対応をし、夜はホテルの宴会場でサービスのお手伝い。

並行して「いまクローズしているお土産物店を再度オープンさせ、利益を出すためにはどうしたらいいか」を何度も何度も相談を受けました。ご迷惑をかけたはずの取引先でさえ「また部長を応援したい」と何社も協力して頂き、5か月後には再オープンに成功したのです。いまではそのお土産店周辺は○○の駅(道の駅みたいな民間施設)という名称に変え、ちょっとした人気スポットになっています。


実は、この話にはまだ続きがあります。この部長の働きを見ていた元部下たちから「また事業部長に戻してほしい」という声が次々に社長に届いたのです。また給料が下げられていることを知った一部の同僚からは「あの働きでその給料はおかしい」という声まで上がってきました。ちなみに、部長職は空席のまま、社長が兼任されていました。

社長はこのお土産店オープン後、この部長を事業部長に戻し、「特別臨時ボーナス」としてこの給料が下がっていた期間の差額全額を支給しました。それも全社員の前で、です。そしてこれには誰もが納得して、笑顔で拍手で盛り上がりました。素敵な一瞬でした。


この時に「責任を取るということは、こういうことなんだな」とつくづく感じました。私たちも勉強させて頂いた素敵な経験でした。

「責任を取って辞めます」と思ったことのある皆さん、この部長の動き、どう感じますか?

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