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パーキンソンの法則 ― 適正人数や費用を考える際に思い出してほしいこと

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お取引先で現場や経営の改善を行う際、私が必ずお伝えすることの一つが「パーキンソンの法則」です。この法則を念頭に置いて人員配置や業務、経費などを見ていくと、それまで当たり前だと思っていたものが、少し違って見えてきます。

まずは、パーキンソンの法則として広く知られている、代表的な二つの法則です。


■第1法則

仕事の量は、完成のために与えられた時間を全て満たすまで膨張する。

■第2法則


支出の額は、収入の額に達するまで膨張する。


人や組織には、『与えられた時間・予算・人員などのリソースを、その上限まで使ってしまう』傾向があります。そして、その状態が続くことで、いつの間にかそれを『適正』『必要な量』と認識してしまいます。

私が現場に入ると、「いま、ここにこの人数は必要ですか?」「この業務に、これだけの時間が必要ですか?」「本当にこれだけの費用がかかりますか?」といった問いかけをします。

すると、多くの場合「これ以上人数を減らしたらオペレーションが回りません」「これ以上は削れません」「予算的にもこれくらいは必要です」という答えが返ってきます。

もちろん、本当にそうである場合もあります。しかし、様々な現場を見てきた経験上、同じような規模や業務内容でも、もっと少ないスタッフで問題なく運営されていることは珍しくありません。経費についても、「本当にそこまで必要だろうか」と感じることがあります。重要なのは、現在の状態をそのまま「必要」と考えないことです。


■「今いる人数」と「必要な人数」は違う

例えば、ある時間帯にスタッフが5人配置されていたとします。「なぜ5人必要なのですか?」と尋ねると、「昔から5人です」「4人では大変だからです」という答えが返ってくることがあります。

しかし、それだけでは5人必要である根拠にはなりません。以前は忙しかったため5人になり、その後業務量が減ってもそのままになっているかもしれません。業務そのものを見直さず、人を増やすことで対応してきた結果かもしれません。また、5人いることを前提として仕事のやり方が作られている可能性もあります。

ここで一度、「いま5人いるから」という前提を外します。そして、「この仕事を、この品質で行うためには、本来何人必要なのか」というところから改めて考えます。さらにもう一つ、「そもそも、この仕事は必要なのか」まで考えてみます。

これだけで見えてくるものはかなり変わります。


■人がいるから生まれている仕事もある

パーキンソンの第1法則は、時間だけでなく組織や人員について考える際にも参考になります。人がいるからこそ、仕事が増えていることがあります。

例えば、

・同じ内容を複数の人が確認している
・紙とパソコンの両方に同じ内容を入力している
・何年も前から続いている報告書を目的が曖昧なまま作っている
・必要以上に細かなチェックを行っている
・参加する必要のない人まで会議に参加している
・お客様への価値につながらない作業を習慣として続けている

こうした業務は、現場では意外と少なくありません。だからこそ、「人を減らすことができないか」を考える前に、「仕事を減らすことができないか」を考える必要があります。

・不要な仕事をなくす
・重複している仕事をまとめる
・時間を変える
・担当を変える
・システム化する
・やり方そのものを変える
・そのうえで必要人数を考える

改善の順番としてはこちらが先です。


■予算も「あること」が前提になっていないか

第2法則も、企業経営では意識しておきたい考え方です。例えば年間100万円の予算があり、年度末に30万円残っていると、「せっかく予算があるから使おう」という発想になることがあります。

しかし、本来は逆です。「予算があるから使う」のではなく、「必要だから使う」。これは非常に大切な違いです。

また、「以前から契約しているから」「毎年これくらい使っているから」「この業界ではこのくらいかかるから」という理由だけで続いている支出もあります。システム利用料、広告費、外注費、リース、サブスクリプション、仕入れ、消耗品など、毎月自動的に支出されるものほど、見直す機会がなくなりがちです。

そこで私は、「もし、この予算が半分だったらどうしますか?」と考えてもらうことがあります。実際に半分にする、という意味ではありません。予算にあえて制約を設けてシミュレーションすることで、「これは絶対に必要」「これはなくても困らない」「別の方法でできる」「こちらにお金を使った方がいい」と優先順位が見えてきます。


■大切なのは「削減」ではなく「適正」

ここで誤解してほしくないのは、パーキンソンの法則を意識する目的は、人員や経費をとにかく減らすことではありません。特にホテルや旅館などのサービス業では、人を減らしすぎると、

・清掃品質が落ちる
・接客品質が落ちる
・スタッフの負担が増える
・残業が増える
・離職につながる
・お客様満足度が下がる

といったことが起こり得ます。人件費を減らした結果、サービスが低下し、お客様が減り、売上まで落ちてしまえば経営改善とは言えません。

経費についても同じです。広告費を削れば利益が増えるように見えても、それによって集客が落ちれば意味がありません。設備の修繕費を惜しみ、後から大きな故障につながれば、かえって高くつきます。

私がお伝えしているのは、

「最少人数」ではなく「適正人数」

「最低費用」ではなく「適正費用」

です。減らすことそのものが目的ではありません。限られた人・時間・お金を、どこに配分すれば最も良い結果につながるのかを考えることが目的です。


■「余裕」があること自体は悪くない

もう一つ注意したいことがあります。余裕があること自体は、決して悪いことではありません。ホテルや旅館では、毎日同じ業務量になるわけではありません。満室の日もあれば、団体のお客様が入る日もあります。急な欠勤、設備トラブル、お客様からの想定外のご要望なども発生します。

常にスタッフが100%動いていなければ成り立たない人員配置では、何か一つ問題が起きただけで現場が回らなくなります。したがって、一定の余力、いわゆる「バッファ」は必要です。

問題なのは、「何となく余っている」のか、それとも、「何かあった時に対応できるよう、意図的に余力を持たせている」のか、この二つを区別することです。必要な余裕まで削ってしまうことは、効率化ではありません。


■一度、現在の状態を忘れて考えてみる

人員配置や経費について考えるとき、現在の数字から考え始めると、なかなか発想を変えることができません。

「今5人いるから、5人必要」ではなく、「この仕事を、この品質で行うには何人必要なのか」。

「毎年100万円使っているから、100万円必要」ではなく、「この目的を達成するには、本来いくら必要なのか」。

一度、現在の人数や予算を忘れて、ゼロから考えてみる。そして、

「なぜ、この人数なのか」
「なぜ、この時間が必要なのか」
「なぜ、この費用が必要なのか」

と問い直してみる。それに根拠や具体的検討結果を持って答えられるのか。当たり前だと思っていたものの中に、改善できることが見つかるかもしれません。

パーキンソンの法則は、単に人員や経費を削減するための考え方ではありません。

慣習や思い込みによって膨らんでいるものがないかを確認し、人・時間・お金という限られた経営資源を、より適切に配分するための視点。

私はそのように捉え、現場や経営改善の際に活用しています。

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