18.08.31
サービスの4つの特性・・・サービス業従事者が意識しておくべきこと
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マーケティングの第一人者 フィリップ・コトラーは、いわゆる「物」だけではなく「サービス」に関するマーケティングも深く追求しています。コトラーはサービスに関しては次の4つの特性があると述べており、サービス業従事者は経験上それはよくわかります。ただ、それを常に意識しているか/理解して動いているかは別問題です。だからこそ、しっかりと戦略に活かす必要があります。
■ 無形性/非有形性(Intangibility)・・・ サービスには形や物がなく、無形のものである。
■ 不可分性/同時性(Simultaneity) ・・・ サービスは提供者(スタッフ等)と享受者(お客様)の間で共に創り上げられるものである。生産と消費が同時進行する。
■ 変動性/非均一性(Heterogeneity)・・・ サービスのレベルや質を全く均一に標準化するのは非常に困難である。
■ 消滅性/非貯蔵性(Perishability) ・・・ サービスは蓄えておくことが出来ない。
さっと見ただけで、もうなんとなく理解できる方も多いと思います。「知っている」「わかっている」という人も多いでしょう。だからこそ、私たちがこの4項目すべてをきちんと意識しながらビジネスを行えているか、再度確認してみましょう。
■ 無形性/非有形性(Intangibility)・・・ サービスには形や物がなく、無形のものである。
ホテル業界の場合、お部屋の提供がわかりやすいですね。お客様には寝る場所、洗面関係、その場で消費してしまうアメニティなど「お客様の手元にのこらないもの」⇒「快適に過ごせる時間と空間」を提供しています。それが売り物です。その為、徹底した清掃、清潔感、過不足のないアメニティ、快適な寝具などが必要になります。
時々お部屋に対するクレームで部屋チェンジすることがありますが、その場合すでにお客様の「快適な時間」を奪っていることになります。チェックイン 15:00 アウト 10:00 であれば、その時間内は完ぺきなお部屋空間を提供する必要があります。
私が以前勤めていた事業再生系のホテルでは、21:30頃 少し酔ったお客様がいたずらで非常ベルを押されたことがありました。すぐに止めたのですが、お客様の快適なご滞在を妨げたとして「その日のご宿泊内容と全く同じ内容でもう一度ご宿泊出来る券」を準備、その日のすべてのお客様にお配りしました。その日の売上は全額パーですが、この「自分たちが売っているサービス」に対する認識と誇りは徹底していました。
また、私たちはお取引先とは「ハードで負けてもハートで勝つ」を合言葉に、経済的余裕のない中小宿・店には 3S(接客、清掃、清潔感)に徹底的に取り組むことをアドバイスしています。これもこの「無形性/非有形性」を重視している点です。
【ご参考】清掃の重要性 ・・・ ハードで負けてもハートで勝つ!
https://delighting.co.jp/blog/clean/
■ 不可分性/同時性(Simultaneity) ・・・ サービスは提供者(スタッフ等)と享受者(お客様)の間で共に創り上げられるものである。生産と消費が同時進行する。
披露宴会場等では新郎新婦を主役にし、サービススタッフと列席者の方々みんなでそのパーティを創り上げていきます。もちろん十分な打ち合わせはありますが、本番はリハーサル無しの一発本番です。その為、一生に一度の想い出をお客様と共に同時進行で完ぺきに進行する必要があります。
機械トラブルや何かしらの物理的トラブルで後日その分返金して貰った、というのはどこのホテルでもよく聞くことですが、本質的にはそれは問題解決になっていないことをみんな理解すべき点です。
【ご参考】「人生に銘す想い出」を何度も感じた日
https://delighting.co.jp/blog/mission/
■ 変動性/非均一性(Heterogeneity)・・・ サービスのレベルや質を全く均一に標準化するのは非常に困難である。
同じ料金で同じ料理を提供する場合でも、担当するスタッフによってその空気や空間は変わってきます。また同じ「簡単な料理」を作るとしても先輩と新人では出来が違います。私もよく賄いを食べますが、同じようなメニューでも「今日は○○が作ったんだろ?」とわかります。
サービスには人間が関わることですので、機械の様な全く同一のものを提供することは出来ません。ただ、どんな場合でも社内基準を超えたレベルのスタッフに担当させる必要があります。私がたまにいくラーメン屋さんは、おばちゃんたちの時は店の雰囲気がとてもいいのですが、おじちゃんたちの時はすごく普通です。だから出来ればおばちゃんたちの時に行きたいと思います。
【ご参考】サービスに携わる人が必ず知っておくべき公式
https://delighting.co.jp/blog/formula/
■ 消滅性/非貯蔵性(Perishability)・・・ サービスは蓄えておくことが出来ない。
ご宿泊の空室や宴会場の空き、レストランの空席など「翌日に持ち越しする/翌日にその分を上乗せして売る」ことが出来ないものは多々あります。また、何かを売ろうと計画したら一日でも早く売ることで、販売チャンスを増やすことが出来ます。物販でも少しでも早く売り始めれば、その分余計に売れる可能性があります。時間も蓄えておくことが出来ません。これはもうあえて説明する必要もないでしょう。
これまで述べた内容は、サービス業の方々には「当たり前」だと思います。読めば「知っている」「わかっている」と思われた方も多いでしょう。しかしそれをすべて毎日意識し行動に移しているか、クリアにしているか、自信を持ってYesと答えられる方は少ないのではないでしょう。
「知っている」「わかっている」と「やっている」は違います。
「やっている」と「できている」はもっと違います。
これは改善先で非常に頻繁に指摘することです。「知っている」と「できている」のギャップをご自身で感じて下さい。ご自身の部下や周りのスタッフも含めて、この4点は共通認識として心に刻み、「できている」まで徹底しましょう。
写真は無料素材:写真「AC」 https://photo-ac.com
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