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稼働率が高い・行列が出来ることが「正解」だとは限らない

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 宿泊業界では、一日に部屋がどれだけ売れたかを表す「稼働率」が経営や人気の指標となります。一般的に日本のシティホテルクラス以上では80%以上を一つの目安にしていますが、海外の超一流ホテルでは60%強を目安にしています。(一般論であり、各ホテルや戦略によって異なります)

 また、アパホテルは「100%以上」など驚異的な数字を叩き出しています。これはデイユースと呼ぶ昼間の利用を設定し部屋を一日二回転させ、例えば100室のホテルで昼5室/夜は満室の計105室売れた場合、稼働率105%となります。ただ、アパホテルは自動チェックインや精算など視点の違う独自のサービスを提供しているので、今回のコラム話題からは除外します。


 さて、タイトルに「稼働率が高い・行列が出来ることが正解とは限らない」とつけた理由を説明します。単純に考えた時、稼働率が高いこと/飲食店に行列が出来ることは正解のように思えます。もちろん正解の場合もたくさんあります。ただ今回は、「正解とは限らない場合がある」ことを取り上げます。

 私たちがコンサルを担当する場合、あまりにも人気がありすぎると「なぜ稼働率が高いのか」「なぜ行列が出来るのか」を徹底調査します。もちろん「高くても泊まりたい魅力がある」「並んでも食べたい美味しさで、満足感が非常に大きい」「十分な利益が稼げている」などポジティブな要因・状況であれば、なんら問題がありません。いわゆる「正解」です。

 しかし「他社より値段が安いので泊まっている」「味は普通だけど、値段が安いから並んでいる」のであれば、そのホテルや飲食店のプライシング/施策は「不正解」です。


 わかりやすいよう、単純な数字で例を挙げます。


■ 室料5,000円の客室数100/稼働率100%/利益率10% のホテル ・・・ 利益 50,000円/日

■ 室料7,000円の客室数100/稼働率 70%/利益率15% のホテル ・・・ 利益 73,500円/日



 室料が高くなると稼働率は落ちます。しかし利益率は大きくなるので、残る利益は多くなります。また稼働率100%と70%の時のスタッフ負担は大きく異なります。100%の時は次々押し寄せるチェックインのお客様やお問い合わせに追われ、満足なお客様対応が出来ない場合も多く見られます。これに対し稼働率70%の場合はスタッフにも余裕があり、しっかりとしたお客様対応が出来、顧客満足度も向上させることが出来ます。行列が出来る飲食店もこれと同じような考え方が出来ます。

 冒頭で、日本のシティホテルは80%以上を一つの目安にしているが、海外の超一流ホテルは60%強を目安にしていると述べましたが、理由がお分かりになりますか?海外のホテルではスタッフが顧客対応に十分な時間と力を注げるよう、稼働率60%強を一つの目安としています。またそれに基づいたプライシング戦略をとっています。


 上記の計算例はあくまで一例で、「稼働率が高い」や「行列が出来る」理由は様々です。ただ、その「理由」が「もっと利益を上げられる」「もっと顧客満足度を上げられる」「お客様に対する精神的余裕をスタッフに持ってもらう」ことに反していないか、経営者視点で見直してみることは必要です。


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