18.10.11
プライシング戦略 ・・・ 自社にとっての「適正価格」を見出しましょう
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いま皆さんが扱っている商品やサービスの価格はどのように決められたのでしょう?(プライシング)
まず基本になるのは材料費や人件費などの原価を基に、そこに必要な利益を加えて価格を決める方法です。これは消費者のことは一旦考えず、自社基準でのプライシングです。あるホテルではビール原価+利益でビール大瓶 1,200円 で販売し、お客様からかなりの悪評を頂いたことがあります。これはこの方法でのプライシングが失敗した例です。ただし、まずはこの方法で計算しないと、そもそも自社利益の目安を把握できません。最初に行いましょう。
またよく耳にするのは、担当者の経験と感覚で価格が決められるプライシングです。当たらずも遠からず、の価格設定が多く見られます。情報量が少なかった過去には有効な面もありますが、どんな情報でも検索できる現代では競争力の無い価格となっていることも多々あります。また、このような経験者がいない場合、そもそもできない設定でもあります。
最近は競合他社や消費者の動向を見極めて、そのマーケットの動きに合わせて設定するプライシングが主流になっています。ホテルや旅館で使われるレベニューマネジメントもこの種ですね。ただ、これもまずは自社基準を作り、その価格を基に上下させるものです。単純作業ではありません。
顧客視点のプライシングをする為にはどうすればいいのか。それは「顧客が自社に対してどれだけの価値をどこに感じてくれるのか」を十二分に検討し、それを理解することから始まります。一番一般的に行われているのはアンケートや口コミのチェックです。
例えばアンケートの結果が「美味しかった」「楽しかった」「サービスに満足した」等であればそのプライシングは適正かもしれません。各社状況によるため一概には言えませんが、料金のことが書いてなければ、お客様はその値段を高いとも安いとも感じていない状態です。
逆に、「安かった」「他よりコスパが良い」など値段中心であればプライシングが間違っている可能性があります。安いから来る、安いから利用する、安いからこれでも満足、などの評価は「低価格が評価」されているのであり、自社製品やサービスが評価されているのではありません。
私たちがコンサルに入るホテルや旅館、飲食店でこれらの口コミが多い場合、急いでプライシングを見直します。もっと利益を上げられる可能性があるからです。また「安い!」はいずれはそれが基準になり、値段を上げることが難しく、自社が目指すブランディングにも悪影響を与えることが多々あります。逆に「高かった」「コスパが悪い」などはそれだけの価値を自社に感じて頂けていないということですので、サービスや商品を大至急改善する必要があります。値段を下げるのも即効性はありますが、ただこれは一時的なもので根本解決になりません。自社提供内容の改善に目を向けて下さい。
簡単かつ極端な例を挙げると、安売(売値 10,000、利益 2,000)で10部屋(売上 10万、利益2万)売るより、同じ部屋・同じ経費を適正価格(売値 20,000、利益 12,000)で2部屋(売上4万、利益2.4万)で売った方が儲かるし、労働も楽です。
「ぼったくれ!」という意味ではありません。弱気な安売りはやめて自社の適正価格をきちんと把握しよう、ということです。稼働率が高い、いつも満室、というのは実は正解ではないことも多いのです。
以前「ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー」に掲載された論文によると、価格を1%改善すると営業利益が11.1%改善されるそうです。これは販売量を1%改善するより3.4倍の効果があるとのことです。安売王を目指すのであれば値段を安くしてトップラインを上げることが目標で理解出来ますが、自社が目指すのはどこか、お客様が価値と価格の両方に納得してくれるのはどこなのかを十分に見極めましょう。プライシングはブランディング、マーケティングに大きく関係しています。
伝統的なマーケティング は 4Pからなると言われています(Product 製品、Price 価格、Place 流通、Promotion プロモー ション)。プライシングはマーケティングと関係なく設定されることもありますが、重要な「マーケティングツール」として意識しましょう。
余談ですが、コトラーはこの4Pに現代では Physical evidence 物的証拠、Process プロセス、People 人 を加えて7Pと紹介しています。
写真:Pixabay · 魅力的なフリー画像 https://pixabay.com/
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