18.09.05
ES・・・「ESなくしてCSなし」その重要性
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「ESなくしてCSなし」
皆様よくご存じの言葉です。CS(顧客満足 Customer Satisfaction) はよく取り上げられますが、ES (従業員満足 Employee Satisfaction) は疎かになっている経営不振企業が非常に多く見られます。接客業では「現状の待遇や状況に自分は全く満足していないが、お客様には心から満足して頂こう」と考えられるスタッフは本当にごく少数で、CSに大きく影響しています。「自分が満足していないのにお客様に100%の笑顔が出るスタッフ」は、それこそ神様みたいな存在です。
「ESを上げる」には、まず真っ先に給与面の改善が思いつくでしょう。ただ、経営不振企業には原資がありません。また「やり甲斐」という漠然としたものもすぐに準備出来るものではありません。一つの例として、10年ほど前に私が九州のホテルグループ2館で事業再生を行った際、効果を上げた内容を紹介致します。この事例は許可をいただき、セミナーで成功事例として紹介しています。
■ 頑張っている人、他の人に慕われている人に役職を与える。
この企業はワンマン社長の下、みな言われるがまま仕事を淡々とこなしていました。そこで、数名を選び役職を与え、ある程度の権限・裁量権を与えて貰いました。少しの責任感を、その人のやり甲斐に繋げようとした試みです。
そしてここが重要なのですが、役職がついてもそれまで出ていた残業代等の条件は変えず、間違った企業がよく行う「名ばかり管理職」にならない様に配慮しました。役職手当は毎月数千円程度ですが、新しい名刺を受け取った彼らはものすごく喜んでいました。また名札にも役職も入れ、責任の所在をはっきりさせました。
言われるがままにただ働くという状況を少し変えてあげることで、自ら動ける範囲が広がり、やりがいにつながりました。またその他のスタッフたちも会社や働き方の変化に気づき、それが良い空気感を作り上げていきました。
また、イベントやプロジェクトなどその都度「リーダー」を決め、私がアドバイスをしながらその人主導で進める機会を増やしました。一時的にリーダーを務めることも環境や考え方の変化に繋がり、自信とやる気喚起につながりました。
■ ボーナスが出る基準、給与UPになる基準を明確に示す。
この会社は10年以上給与据え置き、ボーナス支給無し、という状況でした。ただ、経営状況を精査する限り、無理もない状況です。
そこでまず「前年同月を超えたら、大入袋を出す」ということを全従業員に伝え、前年同月を超えた金額の10%を全員で山分けする、これをこの一年間続ける、ということにしました。例えば、前年が1,000万、今年が1,100万だった場合、超過分100万円の10%(10万円)をみんなで山分け、という内容です。毎月支給にしたのは、目標までの時間を短く、すぐにまた次の目標に向かえるようにです。
従業員のやる気は一気に上がりました。これまで固定・残業代以外の報酬が無かったので無理もありません。驚くほど目の色が変わりました。この取り組みを始めて3か月で初めて上回り、一人「220円」の初成果が!それぞれポチ袋に入れ、スタッフが働いている現場に社長自ら行ってもらい、全員に手渡しで配って貰いました。こんな金額でしたが、泣いて喜ぶスタッフも大勢いました。使わずにそのままずっと保管している子もいました。達成感ですね。この日の光景はいまでも鮮明に覚えています。
ただこの話には続きがあり、それから半年もしないうちに一人「10,000円以上」になってしまい、パートさんらの扶養問題が発生、この制度自体は途中で打ち切りとなりました。経理担当の〇〇さんがとても困っていたので、その代わりに社内で使える無料サービス券やイベントへのご家族無料ご招待など、あらたなプレゼントに切り替えて提供。それほど従業員のやる気はあがり、この年はボーナスで全従業員に還元しました。ちなみに楽天トラベルでの評価も 3.9 → 4.4 に上がっています。
上記のような施策をする際に重要なことは「毎年予算が決まっており、それを達成することが皆さんの給料の原資になっていること」をきちんと伝えることです。ESを成功させるコツは一方的な満足ではなく、それに応じた責任も心に刻ませることです。
写真:魅力的なフリー画像 Pixabay https://pixabay.com/
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