25.11.22
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利益を守るクレーム対応。鍵は値引きではなく原価コントロール
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宿や飲食店では、万が一お客様とのトラブルが起きた時、誠意を示すために「値引き」を行うケースがよくあります。しかし実は、値引きは“経営にとって最もダメージが大きい対応”です。
図のとおり、例えば室料30,000円で、必要経費・固定費20,000円、利益10,000円だとします。感覚的に30,000円から3,000円を引いている気になりがちですが、実際は利益10,000円から3,000円が引かれています。つまり、値引きは利益を直接削り取る行為であり、トラブルが続けば続くほど利益はどんどん失われ、経営体力が削られていきます。
仮に同じ3,000円という額面を誠意として使う場合でも、まったく別のアプローチがあります。3,000円分の料理やドリンクを提供したり、売店で使える金券をお渡しする方法です。この場合、会社が負担するのは“3,000円そのもの”ではなく、実際は材料費や売店商品の仕入れ原価のみです。原価率を20~50%と仮定すれば、3,000円に相当する品物を提供しても、実際の負担は600~1,500円程度。値引きと比べると、会社の損失は圧倒的に小さくなります。
さらに、サービスによる対応は「満足体験」に変わる力を持っています。
・料理が美味しかった
・スタッフが丁寧に対応してくれた
・嫌な気持ちを良い思い出に変えてくれた
こうした感情が生まれれば、トラブル対応が“接点価値”となり、むしろファンづくりにつながることも多いのです。一方で、値引きは「お金で処理された」という印象になりがちで、感情的な回復効果も限定的です。結果として、お客様の満足度は上がらず、会社は利益を失うだけ。どちらにも得のない解決方法になりやすいのです。
お客様の不満や不便を真摯に受け止めることはもちろん大切です。ただし、その誠意を示す方法は「値引きしかない」わけではありません。会社が一方的に傷つく値引きよりも、会社の負担は原価のみに抑えつつ、お客様の感情を癒すサービス提供のほうが、はるかに健全で効果的です。
同じ3,000円でも
・値引き → 利益が3,000円失われる
・サービス → 原価だけの負担で、満足体験をつくれる
この違いは計り知れません。トラブル対応は、ただ損を抑える行為ではありません。「お客様の感情を守りつつ、会社の利益も守る」方法を選ぶことで、結果的に双方にとって良い解決となり、再訪や口コミにつながる場合も多くあります。
※ なお、この考え方は次回特典やリピーター様優待など、ポジティブな対応にも応用できます。
値引き/割引 ・・・ なんとなくやってしまうお得意様への対応
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