BLOG

ブログ

「価値を上げる」と「価格は上がる」

記事一覧»


 私たちが再生・改善のご依頼を受ける際、多くの宿やお店では、「売れないから値下げ」「それでも売れないからまた値下げ」という負のループに陥っているケースが見られます。他館・他店との競争が“商品”ではなく“価格”になることはよくあります。そのお気持ちはとてもよくわかりますし、誰も望んでそうしているわけではないはずです。

 しかし、こうした値下げの繰り返しが、結果的に「自分たちの未来」を削り取っていることに、多くの方が気づいていません。わかっていても止められないケースもあります。利益の出ない目先の売上。その先にあるのは、徒労感だけです。

 言うまでもありませんが、再生・改善のもっとも大事なポイントは、「利益を出すこと」です。値下げ競争をしていては、いつまでたっても立ち直れません。かといって、単に「値段を上げましょう」という話ではありません。いまの内容のまま価格だけを上げれば、お客様は納得できず、悪評につながり、最悪の場合は廃業に追い込まれてしまいます。

 そこで重要になるのが、「自社の価値を上げること」です。「価値を上げる」と、それに伴い「価格は自然と上がる」。この順番、この意識が非常に重要です。価格を上げるのではなく、「価値を上げることで結果として価格が上がる」のです。

 弊社が各お取引で行っている例を基にお話しします。

 「一度、原価を気にせず、総料理長が“本当に作りたい料理”を作ってもらおう」。この提案をすると、驚くほどレベルの高い料理が登場することがあります。いま館や店で出している料理とは、レベル的に大きな開きがある場合がよくあります。「料理長が本気を出すとこんなに凄いもの作れるのか!」とみんなが驚いた宿もあります。このケースでは、最高の料理と今提供している料理、その差が貴社の伸び幅・価値を上げられる余地になります。

 いま出している料理が本当に自社戦略にあっているのか。単に自分たちで「この位の値段で行こう」と、価値や客層を低くしているのではないか。勝手な思い込みで、自社が持っているポテンシャルを十分に活かしきれていないのではないか。

 弊社お取引先数軒で、「原価を気にせず、総料理長が作りたい料理を作って出す」プラン(仮称)を提供しています。料理部分に関しては、これまでの売値の2~3倍になっています。それでも週末はどの館もほぼ満室。常連様からは「総料理長ならもっと美味しい料理を出してくれると思っていた」という笑顔とお言葉を頂くこともよくあります。「次回はいくらでも出す」と別注された方もいます。料理内容を変え価値が上がったことで、値段が上がっています。お客様はそれに納得し、堪能して頂いています。新たな層のお客様も増えています。ちなみに、このプランは完全予約制&CXL料100%に設定しています。


==========

「質を上げると、価値は上がる。価値が上がると、値段は上がる。値段が上がると、利益は残る。」 自分が「上げる」のは質だけ。あとは付いてくる。

==========

これは私たちが現場でよく話すことです。


 上記は一例ですが、この他にもいろんな面で価値を上げ、価格が上がった宿は幾つもあります。料理人に限らず、接客スタッフや館・店の設備・環境など、自ら押さえつけているものがあるかもしれません。その価値を改めて見出し、お客様に提供していく。そのことで自社の価値が上がり、値段も上がっていく。

 私たちは改善時に「顧客総入替」「一日二毛作」を合言葉にしています。現顧客が本当に自社顧客として相応しいのか?今の顧客セグメントは本当に正しいのか?自社のポテンシャルを最大限に発揮した場合、一人残らずお客様が入れ替わり、単価が大幅にアップするかもしれない、そんな仮定・検討を「顧客総入替」という言葉に置き換えています。また一日二毛作は、夕方~翌朝だけでなく、日中になにか販売できるもの・ことはないか?それを考え抜きます。この言葉はいずれまたコラムにまとめます。

 「自社のお客様層にはその価格帯は合わない」という方も多くいらっしゃいます。ただ、いまの自社お客様層は安売りで集まってきた層であり、実は他にもっと合致する層があるかもしれません。怖いかもしれませんが「顧客総入替」を合言葉に、顧客セグメント・価格帯の見直しを行いましょう。

 安売りは何の解決にも繋がりません。「価値を上げる」と「価格は上がる」。それを意識して改善に取り組んで下さい。


CATEGORY

Marketing Strategy


WRITER

Director