21.08.17
ストックデールの逆説 ・・・「希望的観測を持たない希望」を持つ
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飲食・宿泊・観光業界は、繰り返される緊急事態宣言やまん防によって著しく疲弊しています。もちろん様々な業界が同様ですし、コロナ最前線の医療現場の方々には感謝しかありません。今回、このコラムでは私が関わる業界に絞って、話を進めます。
国や行政の要請により、飲食店は休業や時短を余儀なくされています。一部には「休業補償があるからいいじゃないか」という声もあります。何も補償がない業界よりありがたいことは確かですが、それで補填できる店は極わずかです。かなり規模の小さな店が「休んだほうが得」と笑顔でメディアに登場するのは、非常にレアケースです。
大多数のお店は行政施策に則り、〇月〇日迄の期限まで頑張ろうと気を張って耐えています。しかし現状は再延長や別規制で、再度気持ちをへし折られる。また次の期限に向けて頑張っても、また同じ。この繰り返しです。
私は、最近お取引先各社に「ストックデールの逆説」の話をしています。これはジェームズ・C・コリンズ「ビジョナリー・カンパニー② 飛躍の法則」P133-139で、困難な状況の時にどのような心構え・態度で望むかが述べられています。この部分だけでも、飲食店・宿泊・観光業界の方は読んだ方がいいと思います。
権利の関係上この本自体を載せることはできませんので、この逆説について解説されているサイトをご参照下さい。
lifehacker:7年の拷問を耐えた男性が語る、メンタルを強く持ち今を生き抜く「ストックデールの逆説」とは?
Wikipedia:ジェームズ・ストックデール
この逆説は「自分自身が決める対応・気持ち」であり、私達の業界が置かれている「行政が決める対応・それに振り回される気持ち」とは厳密には違います。ただ「今回の宣言でもう終わるだろう」「ワクチン接種が進んだら行動規制も解除されるだろう」という楽観視は、この逆説と同様です。
コラムタイトルに付けた【「希望的観測を持たない希望」を持つ 】、これはストックデールの逆説から感じたことを私が言葉にし、各取引先に伝えていることです。根拠のない希望的観測・楽観は、それが達成できない時、自分で自分を苦しめます。宣言やまん防などの現状は、自分が決めた期限や内容ではありません。ただ、「それで終わる」と思っていても、自分の意図とは別に急にへし折られます。その連続です。
「どれほどの困難にぶつかっても、最後にはかならず勝つという確信を失ってはならない。そして同時にそれがどんなものであれ、自分が置かれている現実のなかでもっとも厳しい事実を直視しなければならない。(ストックデールの逆説 / ビジョナリー・カンパニー② P137)」
現状では希望的観測・楽観を全て捨て、最悪の状況を想定しながら、その上で必ず生き残るという強い目標を持ち続けることが重要です。私はそれを一言で、「希望的観測を持たない希望」を持ちましょう、とアドバイスしているところです。
逆向きのエレベーターを必死に駆け上がり、何とか現状に留まっているのに、その先にまた新たな逆向きエレベーターが設置されていく・・・ そんな毎日ですが、このストックデールの逆説を思い出し、共に耐えていきましょう。
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