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リストラ・・・事業再生では絶対に必要なのか?

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事業再生のご相談を受け実際に会社を訪問すると、依頼主を除くほとんどの方は「怪しい奴が来た」という目で私たちを見られます。


そして全く何の話もしていないのに、勝手に「やがてリストラが始まるようだ」という噂が飛び交い始めます。


これはどこに行っても同じ現象です。当たり前ですね、従業員皆さんの生活がかかっているので、一番の関心事でしょう。



リストラという言葉は「経営悪化による従業員解雇(自主退職の勧め)」という意味で捉えられるのが一般的です。


しかしリストラは Restructuring (リストラクチャリング)の略であり、日本語では再構築と訳されます。


つまりリストラに着手するということは、人事の事だけではなく事業全体の再構築スタートを意味しています。リストラを考える時に、この点は非常に重要です。



事業や業績が悪化している時、私たちが相談を受ける経営陣には大きく分けて「A. 事業の復活、新規事業への進出も含めて何とか売り上げを伸ばしていきたい」「B. 人件費や経費を抑えて、何とか黒字化していきたい」というタイプがあります。


もちろん、どちらか一方だけで完結することはほぼありません。必ずどこかに痛みを伴います。


ただ、完全にB思考の企業はその後潰れたり経営譲渡されていることが多いようです。

私が以前担当して黒字化したホテル2件も、コンサル終了後5年ほど経ちますが先日経営譲渡(大手傘下へ。社長ら退任)されていることを知りました。

本当に素敵な2件でしたので、大手傘下で没個性化していくのは非常に残念です。


この2ホテルは新規事業、例えば需要が見込める別館新設や道の駅等の請負、お土産物屋さんの開業等には消極的で、とにかく経費を削減したいとのご依頼でした。

それだけでは事業はしぼんでいくばかりだと何度も説明しましたが、頑としてこの一点のご依頼のみでした。



対してA思考の数社は事業が拡大していたり、そうでなくても現状を何とかずっと維持出来ていたり、まだご自身たちで経営されています。


もちろん少しのリストラは避けられず、高年齢のパートさん中心に「きちんと年金が出ている人」「ご家族に面倒が見て貰える人」に先に辞めて貰いました。従業員の間でも少しは「納得感のある人選」を心がけていたつもりです。


並行して、若手スタッフには独自企画を提案させ、決まった案件は基本的にそのスタッフをリーダーにし即開始、付帯売上や新規売上で業績を伸ばすようにも動いていました。


その後、辞めたスタッフに声をかけて希望者全員また戻ってきたホテルもあります。中には全く社員を辞めさせずに業績回復できたホテルもあります。



人事だけでなく本来の意味である業務再構築の為のリストラでも、大なり小なり痛みは伴います。まず「事業の改善」を一番に考え「経費削減」に取り組み、それでも無理なら「人員減」を行いましょう。



余談ですが、私の知人が請われてある団体のトップに立つことになった時「自分は電車通勤出来るので専用車送迎は結構です。」と入社前に伝えたそうです。

その話を聞いた時にふと私が「そうか、じゃ運転手さんはリストラだな。」と何気に呟いたところ、彼は急に「そうなるか!じゃ、やっぱり車で送迎して貰おう!」と先の申し出を急遽取りやめたそうです。

運転手さんにはその話がもう伝わっており、今後どうしようかと家族で話していたとのこと、実際に送迎が始まった時に本当に感謝されたようです。


この話は社内でも話題になり、彼への信頼は期せずして高まり、かなりの業績を上げて任期を務めることが出来ました。



「会社を守る」「従業員を守る」、最終決断は会社状況によりいろいろでしょうが、経営者である限り「人があって会社がある」ということは常に意識しておきましょう。



写真:Pixabay · 魅力的なフリー画像 https://pixabay.com/

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