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本当に意味のある「高稼働=正解」ですか? ・・・ 再プライシングの勧め

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 ここ数か月、数件のお宿さんから「価格設定を見直したい」とご相談を受けました。高稼働なのに十分な利益が出ていないお宿さんが多くいらっしゃいます。また、稼働率が高く、運営上の人的・時間的負担が大きくて、疲れていらっしゃる経営者も少なくありません。

 「高稼働」は一見良さげです。閑古鳥が鳴いているお宿さんから見たら、羨ましい限りでしょう。ただ「高稼働=正解」でしょうか?基本的には正解に近いのですが、その点について考えてみます。特に、部屋数の少ない宿の高稼働は要注意です。


 まずはこの図をご覧ください。縦軸に価格帯、横はエリアや年齢層など様々な内容を想定・説明できるよう、空欄にしてあります。


 例えば、客室の少ない宿が 10,000 で宿泊プランを売り出したとします。掲載した途端、すぐに予約で全部屋埋まりました。満室の結果にホッとする瞬間です。でも、もしかしたら15,000でも泊まりたい人の宿泊機会を奪い、宿として利益増のチャンスロスしているかもしれません。

 安い値段の人が先に予約することで、高単価を出せる人が予約を取れない状況になっているかも?です。この表の場合、仮に適正価格を15,000にすれば、同じ部屋を高価格帯の人に売れる(予算がそれ以下の方は予約しない)かもしれません。実は「いつも高稼働・部屋が埋まっている」状態は、このようなロスを生んでいる可能性があります。


 「もっと宿泊代出せるのに、お宅の宿はいつも満室なんだよね」というお客様の声は、実は少なくありません。冗談のように「もっと値段上げなよ」と言われることもあります。人の良いお宿さんは「多くの人に楽しんで欲しいから」とおっしゃることもありますが、結果的に高価格帯の人は予約取れず、「多くの人に楽しんで」もらえません。

 15,000にすれば「いつも満室 → 7割稼働」になるかもしれません。しかし 10,000で100%稼働より、15,000で70%稼働の方が、売上も利益も高く、肉体的負担も小さい結果となります。金銭的にも精神・身体的にも余裕を持って働けます。


例:あるお宿:部屋の売値 10,000円/利益 3,000円 / 客室100
  稼働率100%時の利益合計:3,000 x 100室 = 300,000

  この宿を売値 15,000円/利益 8,000円 に変更。稼働率は 30% 落ちると想定。
  稼働率 70% 利益合計: 8,000 x 70室 = 560,000 


 勘違いしないで頂きたいのは、単に「高くしろ」と言っているのではありません。もちろん、低価格帯のお客様を排除しろと言っているのでもありません。「適正価格を検討しよう」ということです。 特に「高稼働の宿」「部屋数の少ない宿」は、この適正価格を真剣に検討すべきです。

 実際に私たちがお手伝いする場合、決算書や原価、稼働率、受注経路ごとの割合、近隣他社との比較(部屋の広さも含めて比較)など細かく精査した上で、さらには「それにより稼働率がどの程度落ちて、利益にはどう影響するか」まで算出しています。その上で適正価格を算出します。

 また食事付きプラン提供のお宿さんでは経理上の「泊食分離」を行い、宿泊部分の料金精査を行います。そのうえで、例えば松竹梅など様々なランクの料理を原価を基にプラスすれば、宿泊付きプラン造成にも役立ちます。なので、単純に「値段を高くしろ」と提案している訳ではありません。

 お宿さん毎に状況は違うため、上記が全てのケースに当てはまる訳ではありません。いまが適正価格、というお宿さんももちろんあります。ただ、「有名観光地のすぐそばだから」「ものすごく料理の評判が良いから」など、安売り/値段以外での高稼働率理由がわかっていれば良いですが、価格以外に思い当たらない場合、ぜひプライシングを見直しましょう。


 余談ですが、口コミ評価が高い宿では「価格が安い(適正ではない)」ケースもあります。例えば有名高級外資系が10万円の価値部屋を1万円で売っていたら、ほぼ100% 評価5が入ると思います。それと同様の傾向になっていないか?高評価の宿は、適正価格への見直し面ではそこも精査してみる価値はあります。もちろん適正に評価されていることも多く、これは一概には言えません。一つの事例・知識として覚えておくとよいでしょう。



 当社は基本的には110,000円(税込)で、再プライシングのお手伝いをしております。近隣競争価格や、自館の売上・経費・利益率などを基に、平日・休前日・繁忙期・特定日などの販売価格をアドバイスしております。大規模館はもう少しかかりますが、基本的にはこの価格で数回のオンライン会議を行い、新価格を提案し、双方納得の上で新価格を決めております。また稼働率が10パーセント以上落ちることも想定、それでも十分な利益が出るように設定しています。私たちが一方的に提案を押し付ける訳ではありません。

 価格変更をし、浸透するまで約半年ほどは我慢の日々になるかもしれませんが、一度泊まって下さった方には納得感が生まれます。その後は十分な利益を生み出してくれます。当社への相談料もすぐ取り戻せるでしょう。

 当社に頼む・頼まないは別として、再プライシングにはぜひ取り組んでください。


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