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ホスピタリティ ・・・ 世界最高のホスピタリティとは

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 世界最高のホスピタリティ、世界一のおもてなし、と聞いたらあなたは何を思い浮かべますか?超一流と呼ばれる高級ホテルでの接客、三ツ星レストランのお料理など、人によってさまざまだと思います。メディアで取り上げられるのはこのように”映える”ものが多く、もちろんそれも一流のおもてなしです。

 4月から新社会人になり、新たにホスピタリティ産業に就いた方々の声を聞く機会がありますが、一つだけ早めに考え方を改めて欲しいことがあります。それは、高級ホテル・外資系ホテル・大手ホテルなどに就職できなかった人たちが良く言う「あのホテルに就職したかった」という残念な言葉です。

 また「このホテル・旅館・レストランだから、自分のやりたいことはできない」や「お客様に満足して貰えない」という言葉を聞くこともあります。果たしてそうでしょうか?大きく勘違いしていることは、ホテルや旅館、レストランの「名前」「ブランド」が接客しているのではありません。そこにいるのは自分たちと同じホスピタリティマインドを持ったスタッフです。

 他のホテルや旅館、レストランを羨ましく思っている段階で、自社に来て頂けるお客様に対して失礼です。ホスピタリティが素晴らしいかどうか、それはすべて自分自身にかかっています。


 以前のコラム「花束」で取り上げましたが、改めてその話をお伝えします。これは、執筆者がこれまでの人生50年で受けた、世界最高のホスピタリティの話です。

 私は、大学でクラシック音楽の作曲を専攻しており、授業の一つとしてオーケストラの授業がありました。その成果を披露する為に、夏休みの期間中そのオーケストラ全員で過疎地の小学校や中学校に演奏旅行に行っておりました。

 私が大学三年生の時、その実行委員長&指揮者としていった小学校での話です。その小学校は全校生徒12名の本当に小さな小学校です。3年生が一番上級生でした。対して私たちオーケストラは80名以上います。かなり標高の高いところにあり、夏でもプールはビニールハウスで覆われていました。

 校長室には各児童がどんな「山道」を通って登下校しているのか詳細に掲示されており、万一の時も駆け付けられるようにしてありました。その地図にはそれぞれの生徒たちの写真が貼ってあったのですが、驚いたことに全員ヘルメット&ヘルメットの上にライト(石炭夫の様な)での登下校です。正直な感想は「過疎地にもほどがある!」と唖然としたのを覚えています。

 当然この子たちが生のオーケストラに触れる機会などなく、小学校の体育館に私たちオーケストラが出てきた時には児童みんなもの凄く緊張していました。小学3年生の男の子が「いまから音楽会を始めます」とガチガチの緊張状態で挨拶してくれ、私たちは少し微笑ましく思いながら演奏を始めました。

 わかりやすい曲からあえて少し難しい曲まで織り交ぜたのですが、ずっと真剣に聴いてくれて、私たちは演奏しながらものすごく感動していました。

 すべての演奏を終えて指揮台から振り返ると、そこには小学1年生の男の子と女の子が花束とともに、


「昨日学校から帰る時と、今日学校に来る時に、みんなで道のお花を摘んできました。どうぞ」


 もう、オーケストラ全員号泣です。私も本当に心底、なんとも言葉に表せないくらい猛烈に感動しました。

 花束はかなりしおれていました。くたっとしていました。でもそこには私たちのことを思いながらこの子たちが摘んできてくれた想いがものすごく詰まっていました。この気持ちが詰まった花束を受け取る時、本当に手が震えていたのを今でも覚えています。

 この花束は、大学に戻りすべての花を一つずつしおりにして、みんなで分けました。



 これが私の人生における世界最高のホスピタリティです。「本当に気持ちのこもったおもてなし」「感謝の気持ち」には、お金や豪華さは絶対にかなわないんだな、と今でも思います。時々この時のことを思い出して「お金がなくても人を感動させることは出来る」と再認識しています。


 年齢的にも職業的にも、私は様々なおもてなしを経験してきました。高級系~個人のお宿・お店までかなり広範囲に渡ります。中にはハードや料理は素晴らしくても、ソフト面で残念な気持ちになったこともありました。

 ホスピタリティ産業において、一番大切なものはあなたの気持ちです。会社名でもブランドでもなく、一対一で接するあなた次第です。そして世界最高のホスピタリティを感じて貰える瞬間があるかどうかも、あなた次第です。いま自分がいる場所で、自分が出せる最高のホスピタリティマインドを。



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